オギヨディオラは韓国の舟漕ぎの掛け声。1958年生まれのオヤジが趣味という数々の島々をたゆたいながら人生の黄昏に向かっていく


by mihira-ryosei
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キムチチゲをめぐる冒険

 
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 知人が、キムチチゲ屋でもやろうかなと。それで、僕のレシピを教えてくれと。おい、おい、冗談ではない。キムチチゲをなめてはいけない。もっと深遠なもので、韓国の大地で、絶品をたくさん研究してから考えればどうかと答えておいた。
 でもよく考えてみると、僕自身、キムチチゲを韓国でちゃんと食べたという記憶がない。あまりに日常的なので、韓国の友人たちは僕をキムチチゲに誘わなかったのだろう。
 この8月、韓国にいったときに、ソウルの「キムチチゲ」の名店にフォーカスしてみた。ところが、どいつもこいつも日曜日休み。労働者、庶民の食べ物なのだということが窺える。ひとつだけ、検索にひっかかったのは、江南(カンナム)、チョンダム洞のチャンドクテ・キムチチゲだった。有機白菜キムチを100%使っているのがウリで、それらは3年ぐらいの熟成キムチなのだろう。行ってみて、一目で、ああ、これはキサシクタンだと。つまり、タクシーの運転手が好んで選ぶ食堂なのだ。期待がふくらむ。店は満員。壁には芸能人のサイン色紙でびっしり。

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 メニューはキムチチゲしかないので、特になにもいわないでいた。ちょうど目の前に、若いタクシーの運転手、向かい右手に中年の運転手が、まさに煮えたぎったキムチチゲを食していた。あ~そうだ、とラミョンサリを注文する。インスタントラーメンの麺だけを入れて食べる。一人前でも半分でも注文できる。キムチチゲには若干のおかずも、ご飯もつくので。

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 向かいの若い方のチゲがすっかり煮えているので、店のおばさん、アジュマが、若い方のコンロを僕の方にむけてチゲを置き、ガスを点火。強い火力ですぐにグツグツ煮える。そこへラミョンサリを投入。ここまではよかった。で、ところで飲み水はどこかいなとキョロキョロあたりを見回す余裕まであった。スープを味見する。酸味、コク、辛味、ほのかな甘み、すっきりとしたスープ、実にうまい、うまい、よかった、よかった、あいつにこの店のことをおしえてやらないとな・・・と。

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 そのとき、鍋に異変がおこっていた。ラミョンサリが急速にスープを吸収していたのだ。たちまちスープが底をつき始めた。若いのが親切に、火を弱めてくれる。すると、中年の方が、僕に大きなペットボトルの水を差しだしてくれた。おおそうか、これで煮詰めたスープをふたたび蘇生するのかと、僕は冷水を鍋にドボドボ注ぐする。これ見た中年の方は少し怪訝な表情を浮かべたが、気を取り直してすぐに若いのに火を強めよと促す。(たぶん二人は他人です)

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 いや~~うまい、水で薄めてもうまい。ところがまた強い火力ですぐにスープが底をつく、また若いのが火を弱める。水をドボドボ、火を強め、スープが底・・・を繰り返しているうち、店のアジュマがのんきにやってきて、「スンニュン?(スープいる?」といった気がする。「・・・・・あるんだ!」、やかんに入ったそれを注いでもらった。中年のほうは、ほっとしたような顔をした。今度はアジュマが点火してくれた。珍しく動転していた。かすかに手が震えていた。前の運転手、二人が起ちあがった。目で謝意。微笑みがえし。日韓の真の友情の発露。
 なんということだ。キムチチゲをなめていた。まともにキムチチゲのことを考えたことはなかった。これこそ韓国料理の王道ではないか。庶民の伴侶ではないか。素材が単純なだけにこだわり、スープを極めている。
 これからはキムチチゲが増えそうだ。
by mihira-ryosei | 2010-08-28 20:39 | 韓国なんでも