オギヨディオラは韓国の舟漕ぎの掛け声。1958年生まれのオヤジが趣味という数々の島々をたゆたいながら人生の黄昏に向かっていく


by mihira-ryosei
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コムタンの奇跡

コムタンの奇跡 ―本当にあった話―

 2010年2月13日、土曜日。ソウルでの仕事を終え、夕方の便で帰国することになっていた。午前はホテルでまどろみ、起きだし、シャワーを浴び、ネットをチェック、バンクーバーオリンピックの開会式を横目に見ながら、荷造りをした。チェックアウトして、ベルデスクに荷物を預け、外に出る。水曜日の深夜にソウルに入ってから、雪の多い、曇りがちの天気だったが、初めて晴天だ。車が少なく、町はいつもの喧騒が嘘のようにひっそりとしている。明日からソルラル、つまりお正月なのだ。韓国は今日、大晦日みたいなものだ。
 コムタンが食べたい。朝飯の抜きのおっさんが、コムタンを求めてソウルを歩いている。コムタンとは、あっさりした牛の臓物のスープである。なかなかみつからないので、遂にタクシーに乗った。
「明洞(ミョンドン)にある有名なコムタンの店知りませんか?この間行ったんだけど、名前を忘れて、場所もよく覚えていないのです」
 祈るような思いで、運転手に問いかけた。
「・・・・、知らないなあ」
 なんか、無愛想な奴だ。
「コムタンが食べたくて・・・・」
「コムタンねえ・・・・・」
 どうも、やる気なさそうだ。だめかな。
「あっ、思い出した!河東館(ハドングヮン)だ。ハドングヮン!」
 思わず、声量が上がった。これでわかるかも・・・・。しかし、運転手は無反応、知らないみたいだ。
「テレビにもよくでるし、食客というドラマにもでたんだけどなあ・・・・」と追加情報を提供しても、だめだ・・・。
 ところが、運転手が突然、信号停止でカーナビを操作しはじめた。ハ、ドン、グヮンとハングルで入力している。でも見つからない。信号に停止するたび、運転手は検索を続けた。俄然誠意を感じた。しかし、見つからない。
 そうこうするうちに、ミョンドンについてしまった。
 まあ降りるしかない。でも、見つける自信はない。そんな僕の心を察してか、そもそもコムタンに固執するおっさんがアホに思えたか、運転手は言う。
「ここには食べるところがいっぱいあるじゃないか。アンドンチムタックとか・・」
「いいや僕はコムタンが食べたい」
「カムジャタンもあるし・・・」
「コムタン!ナン コムタン モッコシッポ!(僕はコムタンが食べたい)。ここで降りるよ」
 
 仕方ない。探すんだ。悲壮な決意でタクシーを降りたそのとき、奇跡がおこった。タクシーを降りたところが、なんと、河東館(ハドングヮン)の真ん前だったのだ。
 うれしさのあまり、僕は、タクシーのフロントガラスを叩いた。漢字で書かれた看板を力いっぱい指さした。
 運転手も、看板を確認して、ニッコリほほ笑んだ。林家正蔵に似ている。
 僕は右手でガッツポーズ。それに、運転手は右の親指をぐいと突き立てて、応えた。
 
 コムタンがいつもよりおいしく、味わえたのはいうまでもないことだ。

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by mihira-ryosei | 2010-02-14 00:14 | 韓国なんでも