オギヨディオラは韓国の舟漕ぎの掛け声。1958年生まれのオヤジが趣味という数々の島々をたゆたいながら人生の黄昏に向かっていく


by mihira-ryosei
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dog ear 11 世界でいちばん美しい物語

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 子供の頃から、理科や算数が大の苦手だった。大学も私立文系一本。国立大学に進学することはとうの昔にあきらめていた。天才バカボンの「西から昇ったお日様が、東へ沈む」を思い出して、その「歌の反対」という順序を踏まなければ、太陽がどっちから昇るのかもはっきりわからない。(これは今でも変わらない)
 そんな僕が、本屋さんでふと手にとって買ってしまった本。それから何度も、折に触れて、ドッグイヤーのページを開いている。特に落ち込んだとき、惨めなときに、わりと効いてくれる。
 宇宙の歴史150億年から生命の誕生、人類の起源までを、それぞれの専門家がインタビュー形式で答えてくれる。質問が素人的で、それに対する内容も、わかりやすく、ユーモアに富み、かつ格調高い。
 この本を読み返すたびに思うのだが、150億年におよぶ壮大な物語、偶然と奇跡の連続が創りだした自然の法則(宇宙・生命・人類誕生)は、本当はなんらかの意志がはたらき、計画され、仕組まれたものでないのか、という不思議な思いにかられる。最近読んだ『99.9%は仮説』(竹内薫 光文社新書)によれば、「宇宙のどこかに知的設計者がいて、その知的設計者がたとえばDNAを設計して、生物をつくりだした」説が、アメリカでは真面目に議論されているようなのだが。

第一幕 宇宙
 ビッグバン以前から、ビッグバン、カオスの宇宙から、地球の誕生、水による地球の変貌など

 「今世紀の最大の発見は、過去の大多数の科学者が考えていたのとは違って、宇宙は永久不変ではないということです。宇宙には歴史があり、たえず変化して、密度と温度が徐々に低下し、構造を形成し続けてきたということがいまや定説となっていて、観察と理論によってシナリオを復元し、時間を遡ることができます。宇宙の進化が始まった時期についてはさまざまな意見がありますが、ほぼ100億年から150億年と推定されています。数多くのデータが描き出すその当時の宇宙の姿は、銀河や星はおろか分子や原子や原子核すら存在せず、形のない超高温の物質がどろどろの粥状になった、まったくの混沌です。これが「ビッグバン」と名づけられたものです。」

 「地球の歴史の45億年を一日に換算して、午前零時に地球が誕生したとすると、午前5時に生命が出現して、それ以降ずっと発展し続けます。午後8時になってやっと最初の軟体動物が生まれ、午後11時の出現した恐竜は11時40分に絶滅して、哺乳類の急速な進化が始まります。11時55分をすぎてようやく人類の祖先が誕生し、最後の1分間に脳の容積が倍になりました。産業革命がはじまったのはわずか100分の1秒前のことにすぎません。」

 「宇宙は無限に膨張し、冷たくなっていくでしょう。・・・少なくともまだ400億年は宇宙の膨張が続いていくということです。」

第2幕 生命
 原始のスープ、生まれのしずくから生命の形成、種の爆発
 
 「性はどうも共食い現象から生まれたらしいのです。つまり、細胞が互いに食い合って他の遺伝子を取り込み、それらの遺伝子が細胞内で混ざり合ったのです。・・・より複雑な生物になるにしたがい、自己の遺伝子を半数ずつもつ生殖細胞という特殊な細胞が作られるようになります。・・・これは一種の革命です。有性生殖の出現によって、自然は遺伝子を混交させることができるようになり、多様性が爆発的に増大し、生物進化の大冒険が始まります。」

 「死は生と同じほど重要なもので、自然が発展し続けるのに必要な原子、分子、無機塩などを再循環させる働きをします。宇宙にある原子の総数はビッグバン以来一定なので、死によって原子の大がかりなリサイクルが行われ、新たな生命の蘇りが可能になっているのです。・・・どんな生物でも休みなく増殖を繰り返していますが、一種の生物時計ともいえるような化学的振動体が細胞内にあって、各細胞の増殖の回数を四〇回から五〇回程度に制限しています。そしてこの回数に到達すると、遺伝子内にあらかじめプログラムされたメカニズムが働いて、細胞を一種の自殺に導きます。こうして細胞は死んでいくのです。ところが癌細胞だけはこの運命を免れていて、胚の細胞のような機能の特殊化や分化も行わないまま、果てしなく増殖を続けていきます。」

 「まず最も原始的な層は、爬虫類の脳のようなもので、原始的な生存本能、たとえば飢え、渇き、性本能、恐怖、さらに合体を促す快感、それと不可分な苦痛などを統括する部分です。敵が近づくとこの原始の脳が反応して、毒液を出したり飛びかかったりするのです。第二の層は鳥類とともに現れます。これは中脳とよばれる部分で、子育て、巣作り、えさ探し、仕事の分担、さえずり、求愛のディスプレイなどの集団的メカニズムに関係しています。第三の層は霊長類とりわけヒトに見られる大脳皮質で、抽象観念、意識、知性などを生み出す部分です。」

 「私たちの脳はその三層構造のなかに進化の記憶を保存しています。私たちの遺伝子も同様です。それに細胞の化学組成となっているのは原始の海のしずくですから、私たちは自己の誕生の母胎となった環境を自身の内部に保っていることになります。身体そのものが私たちの起源の歴史を語っているのです。」

第3幕 人類 
 アフリカのゆりかご、人類の形成、征服の道

 「まず、人類は同一の起源を持っていること、私たちはみな300万年前にアフリカで生まれたということです。こう考えれば、同胞愛の感情もおのずと生まれていますね。それから、忘れていけないのは、人類は長い自然との戦いをへて徐々に動物の世界から離脱し、その文化によって先天的条件を克服してきた、ということです。今日私たちは驚くほどの自由を獲得し、遺伝子を操作したり、試験管ベビーをつくったりもできるわけですが、一方で人間はとても脆弱な存在でもあります。もし赤ん坊が人間社会の外で育っていけば、その子にはどんな人間的な能力もなく、立って歩くことさえできず、何も習得できなくなってしまうでしょう。今日私たちの尊厳ともなり責務ともなっている、このもろく壊れやすい自由を獲得するまでには、宇宙、生命、人類の進化の全過程が必要でした。私たちが今宇宙や生命や人類の起源を問うのは、それからもっと自由になるためなのです。」

『世界でいちばん美しい物語』 
著 ユベール・リーヴズ/ジョエル・ド・ロネー/イヴ・コパンス/ドミニク・シモネ
訳 木村恵一  解説 池内了 (筑摩書房1998年) *今年の一月、ちくま文庫で刊行
                  
by mihira-ryosei | 2006-04-14 00:37 |