実は、とても重たい映画だというのはわかっていたので、かどやで、ホロ酔いになって映画館に入ったことは、結果として僕にとってはよかった。
はたして映画は、想像以上に重たかった。何度も涙し、目をそむけ、胸が痛かった。現在の北朝鮮と脱北という現実。そして、民衆に降りかかる恐るべき理不尽な不幸。
ところでテレビでこの映画を絶賛しつつ、「現政権を打倒せよ」、「軍事クーデターに期待する」などと叫んでいたコメンテーターがいたが、そういうために動員されてみるような映画ではなかったように思う。もちろん北朝鮮の人権のために闘っている人たちがいることは素晴らしいことだと思うけど。
主人公の家族のみならず、北朝鮮の人々の生きざまは、人間として美しく、気高く、やがて、自らの力で国を変えていくだろうという希望の光も微かに見えたような気がした。
映画、としても十分に魅力のあるものになっている。北朝鮮の「中」、脱北シーン、そしてモンゴルの砂漠、ストーリーの展開も、映像も。
なにが、この異常な国を生みだし、成立せしめ、そして、日本の植民地支配の36年をはるかに超えた今も、いまだにこの体制を維持させているのか。
北朝鮮をとりまく歴史、ソ連(ロシア)、中国、アメリカ、日本などとの国際関係も含めて、冷静に考察し、私たちになにができるのかを僕自身にも問いかけなければならない。
たとえば、日本が変わればなにかが変わるのか。いや、どう変わればなにかが変わるのか。わかりにくいなあ。
映画を観終わった後の心斎橋、僕はまだ酔いが十分に残っており、視界に入る風景が、たむろしている若者、ドーナツを求めて90分待ちの行列、そして、御堂筋はくらくらして夏のように暑く、それに映画の残像が次々浮かんできて、さらにああ沖縄のこともあったなとか・・・なんだか不思議な感覚に襲われた。
観てください。ぜひ。
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by mihira-ryosei
| 2010-05-05 22:05
| 映画・音楽